食道がん
食道がんは、食道に発生する悪性腫瘍で、日本では胃がんや大腸がんに次いで多い消化器がんの一つです。食道の内側を覆う粘膜の細胞ががん化することで発生します。進行すると食道内で腫瘍が広がり、食物の通過が妨げられるため、嚥下(飲み込み)の障害や痛みを引き起こします。
食道がんは早期発見・早期治療が重要です。早期の段階では自覚症状が乏しいため、リスクがある方は定期的な検査を受けることが推奨されます。
主な症状
食道がんの初期段階では症状がほとんど現れないことが多いですが、進行するにつれて以下のような症状が現れます。
- 飲み込みにくい(嚥下困難):固形物が飲み込みづらくなる
- 胸の痛みや違和感:胸骨の裏あたりに痛みや圧迫感を感じる
- 体重減少:食事量が減ることで体重が減少する
- 嗄声(声がかれる):がんが声帯や神経を圧迫することで声がかれる
- 喉の違和感:食道の腫瘍が喉に近づくと違和感が現れる
- 吐き気や嘔吐:食道の通過障害が進むことで起こる
- 黒っぽい便(タール便):がんの出血により便が黒くなる
これらの症状が見られる場合、早めの医療機関への受診が必要です。
診断と検査について
食道がんの診断には、以下の検査を行います。
- 胃カメラ(上部内視鏡検査)
内視鏡を用いて食道内部を直接観察します。がんが疑われる場合は、組織を採取して病理検査を行い、がんの確定診断を行います。 - 超音波内視鏡検査(EUS)
内視鏡に超音波装置を付けたもので、腫瘍の深さや周囲への広がりを調べます。 - バリウム検査(食道造影検査)
飲み込んだバリウムが食道内を通過する様子をX線で撮影し、腫瘍の有無や大きさを確認します。 - 血液検査
全身の健康状態を確認し、治療方針を決定するためのデータを収集します。
治療法について
食道がんの治療は、がんの進行度(ステージ)や患者様の全身状態に応じて選択されます。当院では、早期食道がんに対する内視鏡治療を中心に行っております。食道の粘膜層や粘膜下層のごく早期に見つかった食道がんに対し、内視鏡的粘膜切除術(EMR) や 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) を用いて、内視鏡でがんを切除する治療法です。体への負担が少なく、早期がんの根治が期待できる治療法です。
進行したがんや、内視鏡治療の対象とならない治療が必要な場合や、より専門的な治療が必要と判断される場合は、連携する専門医療機関や高度医療機関へ速やかにご紹介いたします。
予防方法
食道がんを予防するためには、次のような生活習慣の改善が重要です。
- 禁煙:喫煙は食道がんのリスクを大幅に高めます。
- 飲酒を控える:特にアルコールと喫煙の併用はリスクを増大させます。
- バランスの良い食事:野菜や果物を多く摂り、ビタミン類を十分に補給しましょう。
- 胃酸逆流を防ぐ:逆流性食道炎を放置せず、適切に治療することが重要です。
- 定期的な検査:特に喫煙者や飲酒習慣のある方は、定期的に内視鏡検査を受けることで早期発見につながります。
よくある質問
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食道がんの早期発見は可能ですか。
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早期発見は可能ですが、初期段階では自覚症状がないことが多いため、リスクの高い方は定期的な胃カメラ検査を受けることが重要です。
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食道がんは治りますか。
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早期に発見し適切な治療を受けることで、治癒が期待できます。ただし、進行した場合には治療が難しくなるため、早期発見が重要です。
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どのような人がリスクが高いですか。
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喫煙者、飲酒量が多い方、慢性的な胃酸逆流や逆流性食道炎を放置している方、バレット食道と診断された方がリスクが高いとされています。
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食事で注意すべきことはありますか。
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辛いものや熱すぎる飲み物は食道の粘膜を刺激するため、摂取を控えることが推奨されます。また、野菜や果物を多く摂ることが予防に役立ちます。
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どのくらいの頻度で検査を受ければよいですか。
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リスクの高い方は、1年に1回の内視鏡検査が推奨されます。
食道がんは、早期の段階では治療の成功率が高いため、早期発見が非常に重要です。胸の痛みや飲み込みづらさなどの症状がある場合、早めに医療機関を受診してください。当院では、胃カメラ検査をはじめとする精密な検査と、患者様に合わせた治療プランを提供しています。気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。