大腸憩室
大腸憩室は、大腸の内壁が外側に向かって袋状に膨らんだ状態を指します。この袋状の部分を「憩室」と呼びます。憩室自体は病気ではありませんが、憩室が炎症を起こすと「憩室炎」となり、腹痛や発熱などの症状を引き起こします。また、憩室が出血すると、大量の血便が見られることがあります(憩室出血)。
大腸憩室は特に高齢者に多く見られますが、食生活の欧米化や生活習慣の変化により、若い世代にも増加しています。適切な治療や予防によって症状をコントロールし、合併症を防ぐことが大切です。
主な症状
大腸憩室そのものは自覚症状がないことが多いですが、憩室炎や憩室出血を引き起こすと以下のような症状が現れます。
1. 憩室炎の症状
- 左下腹部の痛みや圧痛(特にS状結腸に多い)
- 発熱や悪寒
- 吐き気や嘔吐
- 腹部の張りや膨満感
- 下痢または便秘
2. 憩室出血の症状
- 突然の大量の血便(鮮血または暗赤色)
- めまいや立ちくらみ(大量出血がある場合)
これらの症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
大腸憩室の原因
大腸憩室の発生には、以下の要因が関与しています。
- 加齢
加齢に伴い、大腸の壁が弱くなることで憩室ができやすくなります。特に高齢者に多く見られます。 - 食物繊維の不足
食物繊維が不足すると便が硬くなり、排便時に大腸に過剰な圧力がかかることで憩室が形成されやすくなります。 - 腸内圧の上昇
便秘や排便時のいきみなどが原因で、大腸内の圧力が高まり、憩室が発生しやすくなります。 - 遺伝的要因
家族に大腸憩室がある場合、発症リスクが高くなることが報告されています。 - 生活習慣
高脂肪・高カロリーの食事や、運動不足、喫煙などもリスクを高める要因です。
診断と検査について
大腸憩室は以下の検査で診断されます。
- 大腸内視鏡検査
憩室の有無や場所、出血の原因を直接確認します。憩室出血が疑われる場合に有効な検査です。 - 腹部CT検査
憩室炎が疑われる場合に炎症の程度や膿瘍の有無を確認します。 - 注腸造影検査(バリウム検査)
大腸の形状をX線で観察し、憩室の有無を確認します。ただし、憩室炎が強い場合には行われないことがあります。 - 血液検査
炎症の程度(白血球数やCRP値)を確認します。
これらの検査を組み合わせることで、憩室の状態や炎症の有無、出血の原因を特定します。
治療法について
大腸憩室そのものは無症状の場合が多く、特別な治療は必要ありません。ただし、憩室炎や憩室出血が発生した場合には、以下の治療が行われます。
1. 憩室炎の治療
- 軽症の場合
絶食または消化に優しい食事を取りながら、腸を休めます。必要に応じて抗生物質を投与します。 - 中等症~重症の場合
入院が必要になることがあります。点滴による栄養補給や抗生物質の投与が行われ、膿瘍がある場合はドレナージ(膿の排出)が行われます。
2. 憩室出血の治療
- 自然止血
憩室出血の多くは自然に止まりますが、出血が続く場合には内視鏡で止血を行います。 - 手術
大量出血や内視鏡で止血できない場合には、手術が必要になることがあります。
3. 手術療法
憩室炎が再発を繰り返す場合や、合併症が重篤な場合には、手術で憩室ができている部分の大腸を切除することがあります。
予防方法
大腸憩室の発生や再発を予防するためには、生活習慣の改善が重要です。以下の点に注意しましょう。
- 食物繊維を多く摂る
野菜や果物、全粒穀物などの食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取し、便を柔らかくすることで腸内の圧力を軽減します。 - 適度な運動を行う
運動は腸の動きを促進し、便秘の予防に役立ちます。 - 規則正しい排便習慣
便意を我慢せず、トイレに行く習慣をつけましょう。 - 水分を十分に摂取する
水分不足は便秘の原因となり、憩室の形成リスクを高めます。 - アルコールやタバコを控える
アルコールやタバコは腸内環境に悪影響を与えるため、控えることをおすすめします。
よくある質問
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大腸憩室は治りますか?
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一度できた憩室がなくなることはありませんが、適切な生活習慣や予防対策を取ることで、症状や合併症を防ぐことができます。
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食事で注意すべきことはありますか?
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食物繊維を多く含む食品を摂ることが推奨されますが、憩室炎が発生している場合は、消化に良い食品を摂るよう心がけてください。
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憩室炎や出血を繰り返す場合はどうすればいいですか?
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再発を繰り返す場合は、手術が検討されることがあります。医師と相談し、最適な治療法を選択してください。
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憩室出血は危険ですか?
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出血量が多い場合は命に関わることもあるため、早急に医療機関を受診してください。
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定期的な検査は必要ですか?
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憩室が見つかった場合や憩室炎を経験した場合は、定期的に内視鏡検査を受けて経過を観察することが大切です。
大腸憩室は、無症状で特別な治療が必要ない場合もありますが、憩室炎や憩室出血といった合併症を引き起こす可能性があります。これらを予防するためには、食生活の改善や適度な運動、規則正しい排便習慣が重要です。また、症状が現れた場合は早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です