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いぼ痔(痔核)

いぼ痔(痔核)は、肛門周辺の血管がうっ血して膨らみ、いぼのような形状になる疾患です。日本人の3人に1人が経験するといわれるほど、非常に一般的な肛門の病気の一つです。

いぼ痔は、肛門の内側にできる「内痔核」と、肛門の外側にできる「外痔核」に分けられます。内痔核は初期には痛みが少なく、出血が主な症状ですが、進行すると脱出(いぼが外に出る)や痛みを伴うことがあります。一方、外痔核は強い痛みを伴うことが多く、日常生活に支障をきたす場合があります。

いぼ痔は早期に適切な治療を行うことで、症状の改善が期待できます。また、生活習慣の見直しによって再発を予防することが可能です。

主な症状

いぼ痔の症状は、内痔核と外痔核で異なります。

内痔核の主な症状

  • 出血:排便時に鮮血が見られることがあります。紙に血が付く程度から便器が赤くなるほどの出血まで、程度はさまざまです。
  • 脱出:痔核が肛門の外に飛び出すことがあります。初期には排便後に戻ることもありますが、進行すると手で押し戻す必要があったり、常に外に出たままになることがあります。
  • 違和感:肛門周辺にいぼがある感覚や、不快感を感じる場合があります。

外痔核の主な症状

  • 痛み:血栓(血の塊)ができると、強い痛みを伴うことがあります。
  • 腫れ:肛門の外側が腫れ、触れると固く感じることがあります。
  • かゆみや不快感:炎症が起きることで、かゆみや不快感が現れることがあります。

いぼ痔の原因

いぼ痔は、肛門周辺の血管に負担がかかり、うっ血することで発生します。以下のような要因が原因とされています。

  • 排便時のいきみ
    便秘や硬い便、長時間のいきみによって肛門に強い圧力がかかると、痔ができやすくなります。
  • 下痢
    繰り返し下痢をすると肛門に負担がかかり、痔の原因となることがあります。
  • 長時間の座位
    デスクワークや運転など、長時間座り続けることで肛門周辺の血流が悪化し、いぼ痔が発生しやすくなります。
  • 妊娠・出産
    妊娠中や出産時に腹圧が高まることで、肛門周辺の血管に負担がかかり、いぼ痔を発症することがあります。
  • 加齢
    年齢を重ねると血管や組織が弱くなり、いぼ痔ができやすくなります。
  • 生活習慣の乱れ
    不規則な食生活やアルコールの過剰摂取、辛いものや刺激物の多い食事が、いぼ痔の原因になることがあります。

診断と検査について

いぼ痔の診断は、医師による問診と視診・触診を中心に行います。以下のような検査を実施します。

  1. 問診
    症状の経過、出血や痛みの有無、便秘や下痢の状況を詳しく伺います。
  2. 視診
    肛門周辺の状態を目視で確認し、外痔核の有無や腫れ具合を確認します。
  3. 指診
    医師が指で肛門の中を触診し、内痔核の大きさや位置を確認します。
  4. 肛門鏡検査
    肛門の内部を観察するために肛門鏡を使用し、内痔核の有無や状態を確認します。

症状によっては、大腸がんや他の肛門疾患との区別が必要になるため、必要に応じて大腸内視鏡検査を行う場合もあります。

治療法について

いぼ痔の治療は、症状の程度に応じて段階的に行われます。

1. 保存的治療(軽症の場合)

生活習慣の改善

便秘や下痢を予防するために、食物繊維を多く含む食事や水分補給を心がけます。

外用薬・内服薬

痔専用の軟膏や坐薬を使用し、痛みや腫れ、出血を抑えます。抗炎症薬や便を柔らかくする薬も効果的です。

温水洗浄や Sitz bath(座浴)

肛門周辺を温水で洗浄したり、ぬるま湯に浸かることで血行を改善し、症状を和らげます。

2. 硬化療法(ALTA療法)

内痔核に硬化剤を注射し、血流を遮断して痔核を縮小させる治療法です。手術をしないで治療が可能で、体への負担が少ないのが特徴です。

3. 外科的治療(重症の場合)

痔核結紮切除術

痔核を縛って切除する手術で、重症の内痔核に行われます。

PPH法(直腸粘膜脱剥離法)

痔核を持ち上げる形で切除する手術で、痛みが少なく回復が早いのが特徴です。

予防方法

いぼ痔を予防するためには、日常生活での心がけが重要です。以下の点に注意しましょう。

  1. 食物繊維を多く摂る
    野菜、果物、全粒穀物などを積極的に摂取し、便を柔らかく保ちます。
  2. 適度な運動を行う
    ウォーキングや軽い運動を取り入れ、血流を改善します。
  3. 長時間座らない
    デスクワークの際は、定期的に立ち上がり、体を動かす習慣をつけましょう。
  4. 規則正しい排便習慣
    無理な力みを避け、便意を感じたら我慢せずトイレに行きましょう。
  5. 肛門を清潔に保つ
    排便後は優しく肛門を洗浄し、清潔な状態を保つことが大切です。
  6. 飲酒や刺激物を控える
    アルコールや辛い食べ物の摂取を控えることで、肛門への負担を軽減できます。

よくある質問

いぼ痔は自然に治りますか?

軽度のいぼ痔であれば、生活習慣の改善や保存的治療で改善することがあります。ただし、重症化する場合もあるため、医療機関で適切な診断と治療を受けることが重要です。

排便時の出血がある場合、必ずいぼ痔が原因ですか?

いいえ。出血は大腸がんや裂肛(切れ痔)など他の疾患が原因である場合もあります。医療機関で検査を受けることをおすすめします。

手術をしないで治すことはできますか?

はい。硬化療法(ALTA療法)などの非手術的治療で症状を改善できる場合があります。医師と相談して治療方法を選択しましょう。

いぼ痔は多くの人が経験する身近な疾患ですが、症状を放置すると悪化する場合があります。適切な治療と生活習慣の見直しにより、症状を改善し再発を防ぐことが可能です。当院では、患者様一人ひとりに合った診断・治療を行い、生活の質の向上をサポートしています。肛門の痛みや出血でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。