胃がん
胃がんは、胃の内側を覆う粘膜に発生する悪性腫瘍です。日本では消化器がんの中で最も多いがんの一つであり、早期発見・早期治療によって治癒が期待できる病気です。主な原因として、ピロリ菌感染、食生活、生活習慣、遺伝的要因が挙げられます。
胃がんは進行するにつれて症状が現れますが、早期段階ではほとんど自覚症状がないことが特徴です。そのため、胃がんのリスクがある方は定期的な検査が重要です。
主な症状
胃がんの症状は、進行度によって異なります。早期段階ではほとんど症状がありませんが、進行するにつれて以下のような症状が現れることがあります。
- 胃の不快感や胃もたれ
- みぞおちの痛みや違和感
- 食欲不振
- 吐き気や嘔吐
- 体重減少
- 貧血(顔色が悪くなる、疲れやすい)
- 黒っぽい便(タール便)や吐血
これらの症状がある場合、特に症状が長期間続く場合は、早めの受診をおすすめします。
胃がんの主な原因
胃がんの発生には、以下の要因が関与しています。
1. ピロリ菌感染
ピロリ菌に感染すると、慢性的な胃炎を引き起こし、長期間にわたって炎症が続くことで胃がんのリスクが高まります。日本人の多くはピロリ菌感染歴があるとされ、特に中高年層で感染率が高いことが特徴です。
2. 食生活
塩分の多い食品(漬物、塩辛、味噌汁など)や、燻製食品、焼き魚などの摂取が胃がんのリスクを高めるとされています。逆に、新鮮な野菜や果物を多く摂取することでリスクを下げることができます。
3. 喫煙・飲酒
タバコやアルコールの過剰摂取は、胃粘膜を傷つけることで胃がんの発生リスクを高めます。
4. 遺伝的要因
家族に胃がん患者がいる場合、遺伝的要因でリスクが高くなることがあります。
5. 慢性胃炎や萎縮性胃炎
ピロリ菌感染による慢性胃炎や萎縮性胃炎が進行すると、胃がんのリスクが高まります。
診断と検査について
胃がんの診断には、以下の検査が行われます。
- 胃カメラ(上部内視鏡検査)
胃の内部を直接観察し、がんの有無や粘膜の状態を確認します。がんが疑われる場合は、組織を採取して病理検査を行います。胃がんの早期発見に最も有効な検査方法です。 - バリウム検査(胃透視検査)
バリウムを飲んで胃の形状や異常を確認する方法です。ただし、胃カメラ検査のほうが精度が高いです。 - ピロリ菌検査
胃がんのリスク評価の一環として、ピロリ菌の感染状況を調べます。 - CT検査・PET検査
がんの進行度や他の臓器への転移を調べるために行います。 - 血液検査
貧血や腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)の値を測定し、がんの進行度や全身状態を確認します。
これらの検査結果をもとに、胃がんの進行度(ステージ)を評価し、治療方針を決定します。
治療法について
胃がんの治療は、がんの進行度や患者様の全身状態に応じて選択されます。以下は主な治療法です。
内視鏡治療
- 内視鏡粘膜切除術(EMR)や内視鏡粘膜下層剥離術(ESD)が行われます。
- がんが粘膜層に限局している場合、内視鏡を用いてがんを切除します。これは早期胃がんの治療において最も負担が少ない方法です。
外科手術
がんが粘膜を超えて進行している場合、胃の一部または全体を切除する手術が行われます(部分胃切除術・胃全摘術)。リンパ節の切除も同時に行われることが多いです。
化学療法(抗がん剤治療)
- 手術前後に抗がん剤を使用することで、がんの縮小や再発のリスクを抑えます。
- 手術が難しい進行がんの場合には、化学療法が治療の中心となります。
放射線療法
がんの縮小や症状の緩和を目的として使用されます。化学療法と併用されることがあります。
緩和ケア
進行がんや再発がんの場合、痛みや症状を和らげることを目的としたケアを行います。
治療法は、患者様の状態に合わせて最適な組み合わせを選択します。
予防方法
胃がんを予防するためには、以下の点に気を付けることが重要です。
- ピロリ菌の除菌
ピロリ菌感染が確認された場合、除菌治療を行うことで胃がんのリスクを大幅に低下させることができます。 - バランスの良い食事
塩分の摂取を控え、野菜や果物を多く摂取することでリスクを軽減できます。 - 禁煙・節酒
タバコやアルコールの過剰摂取を控え、胃粘膜への負担を減らしましょう。 - ストレス管理
ストレスは胃の健康に悪影響を与えるため、適度な運動や趣味でリラックスを心がけましょう。 - 定期的な検査
胃がんは早期段階での発見が治療の鍵です。特にピロリ菌感染歴がある方や家族に胃がんの患者がいる方は、定期的な胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
よくある質問
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胃がんは治りますか。
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早期に発見されれば、高い確率で治癒が期待できます。進行がんでも、適切な治療を受けることで症状の改善や延命が可能です。
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ピロリ菌がなくても胃がんになることはありますか。
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はい。ピロリ菌感染がなくても、食生活や生活習慣、遺伝的要因によって胃がんが発生することがあります。
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症状がなくても検査を受ける必要がありますか。
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早期胃がんは症状がないことが多いため、リスクがある方は定期的に検査を受けることをおすすめします。
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手術後の生活はどうなりますか。
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胃の一部を切除した場合、食事量が減少することがありますが、徐々に慣れることができます。医師や栄養士の指導に従い、食生活を調整していきます。
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胃がんの再発は防げますか。
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定期的な検査や生活習慣の改善を行うことで、再発リスクを減らすことが可能です。
まとめ
胃がんは、日本で最も多いがんの一つですが、早期発見・早期治療によって高い治癒率が期待できる疾患です。胃の不調やリスク因子がある方は、定期的な検査を受け、必要に応じて適切な治療を受けましょう。当院では、胃カメラを用いた精密検査や患者様に合わせた治療プランをご提供しています。胃の健康が気になる方は、ぜひご相談ください。